コラム

N氏邸 / 坂倉準三建築設計研究所 / 1964

世界中のじゅうたんのある風景をご紹介します。

坂倉準三建築設計研究所による「N氏邸」(竣工: 1964年)。60年代のこの名作住宅で目を惹かれるのは、まずは室内装飾・素材の鮮やかで上品な色彩感覚。そして、敷き込みじゅうたん、置き敷きラグの適材適所での使い分けです。

居間に敷き込まれた青のじゅうたんを床面とし、ゆったりと配される座面を赤いテキスタイルで包み込んだソファ。木のローテーブル、幅の細い板張りの天井、壁面に用いられたヤキスギレンガ。

対局にある色を用いつつも、異なる素材の組み合わせ、素材そのものの色を活かすことによって、とても上品で調和のとれた空間が生み出されています。

また、居間に加えて、玄関から廊下等の移動スペースは敷き込みじゅうたんで仕上げつつ、食堂の床素材は全てタイルにし、ダイニングセットに適したサイズの大きい北欧式 Rya Rug(毛足の長い手織りじゅうたん)を設えているのも興味深い点です。

恐らく、ダイニングスペースでの汚れやメンテナンスのし易さを考慮したものではないでしょうか。

たくさんの色、素材、設えの手法を取り入れながら、同時に機能面を考慮し、美しくまとめあげられた住空間。住まいのヒントになる要素が沢山の名住宅です。

……

N氏邸

竣工:1964年
場所:兵庫県、西宮市

設計監理:坂倉準三建築設計研究所
担当:西沢文隆、田中洋介、好川忠延
設備:桜井建築設備研究所
施工:建築 増見工務店、造園 福永造園

写真引用:新建築 1965年7月号
撮影:多比良敏雄
出版社:新建築社
出版年:1965年

2023.10.29

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