コラム

研ぎ澄まされたタフティング

 

A scene of the tufting process of hand-tufted Dantsu in our workshop.

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昨今、たくさんの方々がタフティングでのじゅうたん、ラグ製作に取り組まれており、社会の興味関心や市場が広がっていることを嬉しく思います。

山形緞通は、1935年に手織でのじゅうたん製作を始め、1960年代にハンドタフティング製法を追加導入しました。

そして、一般的には、フックドラグやハンドタフテッドカーペットと呼ばれるこのじゅうたんを、工房では古くから「手刺緞通」、愛着を込めて「クラフトン」と呼びます。手工芸を意味する英語「craft」を用いた造語です。

元々「緞通」は、中国由来の高級な「手織」のじゅうたんを指す言葉。そこに当時あえて「手刺緞通」という言葉を用いたのは、手刺の技法を用いながらも「緞通」と呼び遜色のない品質を持ち、人々の生活により日常的な調度として取り入れられる、新たな手工芸品を生み出すための決意でした。

選び抜かれた羊毛、緻密なタフティングの技術、隅々まで心を配った仕上げを経て、独特の高密度でしっとりした風合い、長い耐用年数を宿した、手織緞通に準ずる品質を持つ一枚が生まれます。工房では今も「手織緞通」と「手刺緞通」の2種類を製作し続けています。

職人のタフティング姿に、この受け継がれてきた伝統と歴史を感じる工房独特の所作があります。それは、とにかくタフティングの姿が美しいこと。工具を操っている、従わせているというよりも、工具と職人、人の手が一体となった姿です。

背筋をすっと伸ばした立ち姿。織り進みと共に、一歩一歩ゆっくりと進む歩幅。本来、じゅうたん製作を合理化・量産化するために西洋で生まれたタフティングという製法が、この工房では変容し、修練という言葉に相応しい凛とした工芸性を宿しています。

隣の作業場で毎日じゅうたんを織り続ける熟練の「手織緞通」の職人はよく言います。「つくる姿が美しければ、生まれてくるものも美しいのです」と。

それはものづくりにおいて非常に本質的な洞察であり、逆も然りであることを胸に留めて、成長を目指し続けたい大切な指針です。

video by Masaki Ogawa

 

※高解像度の動画はInstagramにてご覧いただけます。
https://www.instagram.com/p/C6c1BZ5v5Ay/

2024.05.12

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