谷川俊太郎さんの家 / 篠原一男 / 1959
世界中のじゅうたんのある風景をご紹介します。
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今回ご紹介するのは、建築家・篠原一男によって設計された、詩人・谷川俊太郎さんの若き日の自邸、『谷川俊太郎さんの家』(1959年)です。
谷川さんが28歳の頃に竣工したこの建物は、建築面積62.2㎡、18.8坪の平屋の木造小住宅。父である哲学者・谷川徹三の自宅の庭、その西南隅に建てられました。
暮らしの複雑性をふたつの空間で受け止める、シンプルで器のような素晴らしい設計プランはもとより、さらに驚くのは、当時まだ20代後半の谷川俊太郎さんの設えのセンスです。
リビングに大きなスケールで敷かれた無地の緞通(このスケール感がまた絶妙なのです)に集まるのは、シャルロット・ペリアンのアームチェアにスツール。
松村勝男によって特注でデザインされたキャビネットには、なんとも良い佇まいの小物たちが飾られ、オーディオセットまでその中に誂えられています。
毎日の生活と創造が分かち難く結びつく、詩人の家。写真で眺めているだけでも、想像力を掻き立てられます。
誌面(新建築 1959年5月号)で発表された際、篠原一男は、設計の経過として冒頭で「これは若い詩人のすまいである」と綴っています。
その「若い詩人のすまい」は、半世紀以上先でも憧れ続ける人が絶えない、完成度の極まった普遍的な住宅でした。
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谷川俊太郎さんの家
竣工:1959年
場所:東京都、杉並区
設計:篠原一男
施工:大林組
家具設計:松村勝男
家具製作:現代装備社
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写真引用:新建築 1959年5月号
出版社:新建築社
出版年:1959年
2023.11.06