コラム

ザ・プリンス 箱根芦ノ湖/村野藤吾

世界中のじゅうたんのある風景をご紹介します。

村野藤吾設計による「ザ・プリンス 箱根芦ノ湖」(竣工:1978年)のじゅうたん、ラグ、カーペットの設え。どこを取ってもなんて見事なのだろうと、思わずため息が出ます。

細部まで徹底的にこだわり抜かれた有機的なディティール、素晴らしい建築空間の中で、まず目を引くのは本館2階のロビーです。

黒のタイルにすうっと1本の道が浮かび、階段下へと消えるように誂えられた、赤い格子柄のカーペット。その両脇に、柱と柱に区切られるようにして、居心地の良いラウンジスペースが幾つも連なります。

その連なる空間を区切り、足もとから窓越しの緑へ浮かび上がらせるような演出をしているのは、ループ & カットで凹凸のテクスチャが施された、赤ドットのラグ。

ホテルのためにデザインされた椅子「スワンチェア」と、テーブルと組み合わさった美しい調和に、惚れ惚れします。建築空間の中に効果的にラグを誂えることで、心地よい「たまり」が自然に生み出されています。

ロビー以外にも、優美な螺旋階段の最後のワンステップまでクルリと巻き込まれた丁寧なカーペット施工は、その柄のデザインと共に秀逸で、確かな人の手を感じます。

村野藤吾のデザインもさることながら、その表現を実現化した施工会社、メーカー。そして、その意志を受け止めて、竣工当時の美しさを大切に維持し、管理運営する施主。

携わる皆様の素晴らしい姿勢と仕事に、脱帽です。

2023.12.21

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